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「龍ちゃん、どう最近は?」
久しぶりに輝美に会った斎藤。
「どうって、何が?」
アイスコーヒーをひと口飲むと、シロップを入れた。
「何がって、色々よ。お仕事や体調や・・・色々よ」
アイスミルクティーをストローで軽くかき回す輝美。
「まぁ普通だな。こう暑い時期に忙しいのも倍疲れるから丁度いい」
この夏は猛暑と言えるだろう。連日34度前後を記録している。
「普通だったらもう少し会ってくれたっていいんじゃない?」
「だから今日も会っているじゃん」
「私が誘わなかったら会っていないでしょ?」
「そんなことねぇよ。誘おうかって思ってたんだよ」
「また調子いいこと言って・・・」
斎藤は仕事人間というタイプだ。既に一般的な婚期は逃している。もう37歳だ。32歳の輝美とは交際して3年目になる。輝美の希望は20代での結婚だったが、それは夢と消えた。
斎藤は輝美には申し訳なく思いながらも、結婚への一歩を踏み出せないで今日まで来てしまっていた。それはこの仕事が斎藤を躊躇させている要因である事は否めない。大手自動車メーカー勤務の輝美にとって、斎藤の公安調査庁という仕事はただの公務員でしか無かったが、斎藤にとってそれは大きな壁であったのだった。
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