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昔々ある所に、とある家族が住んでいました。
木こりの父親と、幼い兄妹。
3人暮らしの倹しい家庭。
父親は仕事で森へ出ると、日が暮れるまで帰りません。
早くに天の国へと旅立った母親に代わり、まだ10歳にもならない兄が家の中の仕事を請け負います。
日々の暮らしには困らなくても、贅沢は出来ない生活。
それでも一家は仲良く暮らしていました。
風が冷たさを帯び、冬の気配がすぐ隣まで訪れたある日の晩です。
その日も太陽が沈んだ頃に帰ってきた父親を待って、一家は夕食の席に着きます。
テーブルに乗るのは、白い湯気のたつシチュー。
具だくさんでコトコトとゆっくり素材の味を引き出すように煮込まれたそれは、家族みんなが大好きな兄の得意料理です。
寒い夜にはおあつらえ向きの美味しく温かなメニューに、けれど今日は珍しく不評の声が上がります。
「お兄ちゃん、今日のシチューのお肉美味しくない。なんだかパサパサしてる」
そう言ったのは、普段はわがままも言わずにいい子でお手伝いもしてくれる妹。
今日も、パンをこねるのを手伝っていました。
けれど、どうしてもシチューのお肉がお気に召さなかったようです。
大好きな兄が作ってくれた料理なのに、おいしいと言えない。
少女の青い瞳が、悲しげに伏せられます。
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