泉の中の妖宮

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 それから、イサエルは大広間に導かれ、そして何やら宴のような催しを始めた。 「あの、今から何を?」と斜め前にいるヴィージュに問いかけると「主様の歓迎会です」と躊躇いなく答えた。  彼女と似たような和装の衣装を纏い顔に布で隠す美しい舞を披露する女性達、それを見ていながら、二人は真ん中にある客席に案内された。 「ここにお座りなってください。さあさ、お酒を…」と酌をしようとヴィージュが徳利を持ち上げてきた。 「ああ、お構い無く……」と虚勢を張りつつも彼女の注ぐお酒を止められずお猪口に溜まっていった。 満杯まで注ぎ込むとイサエルは申し訳なさそうにそれを持って口につけた。 その時、それに妙なものを感じた。 (お酒って言うよりただの水じゃないか…まぁ、外の世界は今は綺麗になってるが食料と呼ばれるものはまだ、ないはずだ) そんな風に考えてたら、宴は佳境に入っていた。  しばらく賑やかな時間が過ぎて、宴会も終わりを迎えようとしたとき彼女が何かの当たり前かのごとく「それじゃ、就寝の間へ行きましょうか?」と言ってきた。 そして、招かねまま導かれたらそこは厭らしい部屋だった。 妖艶な紫のランプに照らされる様々な家具達、真ん中に置いてあるのは半透明のカーテンがある大きなベッドだった。 その様子を見て、イサエルは悟ってしまった。 このままじゃ呑まれると、それで部屋をパシッと閉められ二人きりな状況になってしまった。
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