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私には変な癖がある。
それは、とある場所を見つめる癖だった。
私の癖は学校の窓から見える場所――自販機を見る事だった。
きっかけは学校で一番モテる先輩が、殴られていたのを見たから。
一ヶ月前、先輩は女子に殴られていた。
痛みのせいか、屈辱のせいか、先輩の瞳から雫がこぼれ落ちる。
初めて私が先輩をキレイと思った日。
その光景は、誰にも言えない秘密だ。
私はその日から、何度も自販機を見る癖がいてしまった。
友達が私の視線の先を追って、どうしたのかって聞くから、私は決まってこう答える。
「喉が渇いたんだよね~」
私は不自然ではない言い訳を、口にして笑う。
いつも友達はそれで納得してくれた。
++++
ある日、私はまた教室の窓から自販機を見つめる。
自販機の前には、先輩のを殴った女子が居た。
今は授業中、こんな時間に教室の外にいるのは、サボりだなって思う。
でも私の体は言うことを聞かなかった。
椅子から立ち上がり、教室を飛び出す。
何を言うかなんて考えていなかった。
私の体は、彼女がなぜ先輩を殴ったのか知りたいと言う思いで、衝き動かされている。
(先輩の事どうして殴ったんですか?)
その理由が知りたい。
教室から飛び出した私の目に、自販機が見えて来た時、彼女の隣には先輩がいた。
私は慌てて物陰に隠れる。
驚くべき事に、先輩と彼女は楽しそうに手を繋いで、笑いあっていた。
(付き合ってるんだ……)
私は先輩が誰かと付き合っているとは知らなくて、ショックを受ける。
肩を落としながら、私は授業が終わった教室へと戻った。
すると、友達の空実(そらみ)が駆け寄ってくる。
「どうしたの、市花(いちか)! 授業サボるとか珍しいよね! 先生が放課後、職員室まで来なさいって怒ってたよ」
空実は心配そうな顔で私を見つめる。
本当の事を言おうか悩み、私は空実の耳に口を近付けた。
「あのね、放課後、相談聞いて欲しいんだけど、いいかな?」
私の言葉に空実は真剣な顔で頷いた。
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