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放課後になり、私は呼び出されていた先生に、頭を下げに行った。
教室で待っていてくれた空実を連れて、空き教室へと二人で入る。
声のトーンを落として、先輩が殴られて泣いていた事と、今日の授業中、見ていた事について話した。
空実は黙って頷きながら聞いてくれる。
最後まで話終えると、空実は困った顔で私に告げる。
「市花、その人、私の親戚なんだ。苗字違うから多分、気が付かなかったんだと思うけど……」
そういって空実は笑う。
私は話すべきでは無かったかなと思いながらも、後悔先立たずの状況だった。
「え、あ、そうなんだ……あははは」
私がなんと伝えるべきか悩んでいると、空実は笑う。
「大丈夫、内緒にしとくからさ。じゃぁ、私からも秘密を言ってもいい?」
「うん、いいよ!」
空実からの提案に私は即座に頷く。
秘密の共有。
それは、空実から聞かされる秘密。
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私は今日も自販機を見つめる。
そこには空実と先輩がいた。
楽しそうに笑う二人。
空実と先輩は親戚同士だが、結婚出来るくらいには、等親が離れている。
空実の秘密。
――それは先輩の事が好きと言う事。
私は自分の恋心に蓋をした。
空実に幸せになって欲しくて、私は先輩を嫌いになった。
急に先輩を嫌いになった私に、空実は不思議そうに問う。
だけど私は笑ってこう答えた。
「もういいの。先輩より、ケーキの方が好きになっちゃったから!」
――空実には秘密なの。
本当はまだ先輩を探して、自販機を見る癖は無くなっていない事。
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