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そして世界はきらめく欠片になるとして
冗談で世界が終わればいいのにと思ったことはある。
いや冗談ではなく、意外に本気だったかもしれない。
私という記号、ごく平凡な十五才であるということに対して焦燥感を感じるからだ。
大人たちはそろって、まだ若い君には未来がある、何にだってなれると言ったけれど、私にはそんなことは信じられなかった。
人にはここまでならなれるけれど、ここから先は難しいみたいな見えないラインがあって、私はどこまでいっても平凡から抜け出せないということを何となく分かっていた。
だから先輩に振られたのだろうかと考えた時、世界なんて終わってしまえばいいのにと思った。
たかだか憧れの先輩から振られただけで大げさなと周りは言うだろうけど、私の小さな世界にとっては大事件なのだ。
同じ中学の頃からずっと野中先輩を見ていた。
先輩と一緒の地元の高校に入り、中学の頃のように先輩のいる陸上部に入った。
少しだけ高い背とか、大きな声で笑うところとか、誰にでもうんと親切に接するところとか先輩に惹かれた理由なんてあげたらキリがないけれど、野中先輩は私にとって向日葵みたいな存在で、その強くて眩しい存在感でいつだって私を元気付けてくれたし、励ましてくれた。
夏が終わっても枯れないその向日葵は、それでも十七年生きたこの年に砂になって消えてしまうかもしれない。
私が世界なんて終わってしまえばいいのにと思ったせいだったらと馬鹿なことを考えるけれど、きっともうじき世界が終わるように神様が決めていたのだろう。
世界には今、星屑病が蔓延していた。
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