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イントロダクション
はじめては、いつもドキドキする。
二回目以降はそんなに緊張しないのに、なんだか変だ。
あの人を見かけると…目が離せないっていうか、気になる。
スキとかそうゆうんじゃなくって、…うん、気になる。
コマっちゃんをはじめて見たのは職員室だった。
ちょっと汚れたようなネズミイロなのか薄緑なのかなんなのかよく分からないぼんやりした色のジャンパーを着て、腕まくりをして、なのに白いシャツの一部がズボンのウェストのところからはみ出ていた。
少し伸びた髪の毛がはねていたのはネグセだろう。
早川に呼ばれるとそっちに小走りで行ってメモを取って、カズに呼ばれるとあっちにまた小走りで行ってメモを取って、またエッチャンに呼ばれて…。
事務用品業社の御用聞きって大変なんだなあって思ったのが第一印象。
「困ったちゃん」なんて呼ばれても、横柄な態度を取る先生たちを相手に困ったような笑顔を絶やさず、文句言わずにお仕事してた。
細身のコマっちゃんは、いつも眠そうな顔してた。
コマっちゃん、もとい、小松さんは二、三週間に一度は学校に来てた。
決まって放課後、四時くらい。
タテボンとは楽しそうに話してた。大学が同じだったんだって。
アタシはなにかと理由を作って、小松さんが来そうな日は職員室の辺りをうろついた。
あるとき、小松さんは大きなダンボールを抱えて二階の職員室へと階段を上がってた。
よろよろして、あんまり不安になったから、手を添えてやった。
ダンボールは重くはなかったんだけど、箱がおっきすぎたんだよね。
階段を登りきったところで一旦ダンボールを床に置いて、アタシの方に寄って来た。
目の前すぐに立ちはだかった小松さんは、とっても背が高かった。
不意にしゃがみこんで、ガムテープで留められてない箱の蓋を開けて、中からなにかを取り出した。
片膝をついたまんまアタシの方に向き直って、「ありがとう」と満面の笑みで、ピンクのバラの造花を差し出してくれた。
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