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「本当になんも知らないのな」 しかし、どうやら言葉は率直に話す人のようでひとつずつが刺さるような気がする。 「う、すみません、不勉強なもので」 「いや、その、……俺こそ言い方が悪かった。農業から離れてるとあんま聞きなじみないもんなのかな」 ぐっと伸びをした男性はこの農園で働いている人なのだろうか。足元の長靴と乾いた土のついたつなぎは使い込まれていて、着こなす姿はこれが彼の普段着なのだと思わせた。 「で、もう始まるけど」 「え?」 「聞いてないみたいだったから説明に来たんだよ。芋の収穫は今から。んで、それはあっち」 「あっ!」 見れば他にも5人ほど体験者がいたはずが、農園の受付をしていた女性とともにどんどん遠ざかって行っている。 その背は畑へ降りる坂道の角を曲がり始めていて、今にも姿が見えなくなりそうだった。 「す、すみません、ありがとうございます!」 慌てて駆けだした先で先頭の女性が気づいて止まってくれたけれど、角を曲がるその時も彼はゆったりとした歩幅で後ろから歩いてきていた。
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