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「皆さん適宜水分取ってくださいねー!」 ほかの参加者に声をかけながら、なんでこうなったのかと首をひねる。 受付の50代だろうと思われる女性がこの農園の園主である堀之内さんの奥様であり、始めてまだ二年だという観光農園にてんやわんやであるという話を伺ってから、ところどころ慌てふためいている様子にどうにもじっとしていられなくて、何かお手伝いがあればと申し出た。 遠慮なく使ってくれるのは構わないのだが、完全にこの農園の人だと勘違いされているのか、お手洗いの場所を聞かれたりもする。 「あかねちゃん、ありがとうねえ。申し訳ないんだけど、あそこのマルチも剥ぐの手伝ってくれるかしら、もう一緒に収穫してしまおうと思って」 「わかりました」 本当にごめんなさいねと眉尻を下げる堀之内さんに構いませんよと笑顔を返す。 スコップを取りに行ったり手袋を配ったり声掛けをしたり。本当に小さな仕事ばかりだがこんなもので感謝してもらえるのだからお安い御用というものだ。 畝二つ分向こうのマルチを剥がそうと、掘っていた場所から顔をあげて立ち上がったのだが。 瞬間。 ぐらりと視界が傾ぐ。 目の前が真っ暗になったあと足元がおぼつかなくなったところまでは覚えているけれど、その後のことを私は全く思い出せない。
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