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琉球建築を思わせる一風変わった目の前の神社こそが、今回の逃避行を決めた理由だった。 ほとんどなんの用意もしないままキャリーケースに適当な服を詰めて、飛行機を予約した。衝動的な旅に必要だったのは”非日常”だ。 あくまで自分の生活をかけらも思い出さないような異質さに目を引かれた。遠くまできた実感がほしかった。 言ってしまえば、疲れ果てた身にはそれさえあればどこだって良かったのだけれど。 ここに来ることそのものが目的のひとつであって、その目的を達してしまった今、私はこれからどうしたらいいのか。 再び自分が空虚になる感覚はまさに思い出したくなかったそのものだった。 あれからどうやって帰ったのか、あまり覚えていない。 しばらくぼんやりとして、何も考えられないまま境内で少し過ごした気がする。 再びタクシーを呼ぶ方が難儀だと思った私は、ホテルまで約3キロの道のりを歩いたけれど道中の景色を楽しむ余裕は全くなかった。
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