忘れたくない人(ラウル)

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 シウスの体調は、本当は出歩く事など出来ないものだった。抱きしめてくれた時にも熱いと感じたけれど、本当に熱かったのだ。 「貴方はどうしてこんな体調で外出などしたのです! 熱が三八度超えて、目眩と頭痛って……いい加減にしなさい!」 「ラウルの様子が変だと聞いて、黙って寝ているなどできるものか」  開き直ったように堂々としているシウスはいっそかっこよくすらある。ベッドに寝かされていなければ。  エリオットは溜息をつき、次にはランバートに視線を向ける。だがランバートはさっさと礼をして「緊急事態でした」と言うばかり。結局は溜息をつき、「大人しく寝なさい」と言って出て行ってしまった。 「では、俺も行くよ。食事はここに運ぶから」 「有り難うございます」 「ラウル、俺に敬語はいらないよ。聞いてると思うけれど、俺達は友達なんだから」  柔らかく微笑むランバートが、やっぱり頭を撫でて行く。自分では随分大人になったと思ったけれど、彼らから比べると小さいらしい。ちょっと、悔しい。  全員いなくなって、ラウルはシウスの側に椅子を持ってくる。そしてそっと、額に手を当てた。  とても熱い。瞳も潤んでいる気がする。     
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