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シウスは首を傾げる。ラウルが騎士団に入ったのは十七歳。だからそれまで教会にいたのだと思った。
だがドロシアは首を横に振る。どこか心配そうな瞳が、笑顔で子供と戯れるラウルへと向けられている。
「教会では十四で、仕事を探し始めるように言うのです。成人したら出なければなりませんからね。その前に仕事をする事を覚えるのです」
「あぁ、なるほど」
確かにそれは大事だろう。何の仕事の経験もなく突然住む場所をなくしては路頭に迷う。そうならない為の事だ。
「中には職人の家に住み込む子もいましてね。そういう子は十四で教会を出ていきます」
「ラウルも?」
「えぇ。けれどあの子、騎士になるまで一度もこの教会に顔を出さなかったのです」
「え?」
一度も? こんなにも子供達を思っているのに?
妙な違和感と、こみ上げる不安。十四歳から十七歳までの三年の空白。この間、ラウルは何をしていたのだろう。
「普通は十四で住み込んでも、休みの時や祭りの時には顔を出して近況を話したり、悩みを打ち明けに来る子が大半。まぁ、中には地方に出て戻ってくる事の少ない子もおりますが、それでも一年に一度くらいは顔を出すものです。ですがラウルは三年の間、一度も顔を出した事がありません」
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