忘れたくない人(ラウル)

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 数日で、シウスは自室に戻る事になった。本人は「懸案事項がなくなった故、もう平気だ」ということらしい。  そしてラウルは、シウスの部屋に住む事になった。 「あ……」  部屋に入ってすぐ、とても懐かしかった。探るように足を進めて、見回す。そしてそっと、ソファーの一角に座った。 「ふふっ」 「どうかしましたか?」 「いや。そこは気に入ったかえ?」 「え? はい」  戸口が見えて、なんだか落ち着く。隣りにシウスが座って、そっと肩を抱いた。 「ここは、記憶を無くす前からお前が気に入っていた場所じゃ」 「そう、なんですか?」 「あぁ。入口が見渡せて、安心するのだろう?」 「はい……」  そんな事まで話していたんだ。思うと少し頬が熱い。  部屋に戻ってすぐに、シウスは仕事を始めてしまう。部屋に日に数回人が来て、沢山の紙の束を置いて行く。それを見るだけでなんだか圧倒されてしまった。 「あの、これを一日で処理するのですか?」 「ん? あぁ、大体な。他の兵府からの報告が来なければ進められぬ話もあるが」 「この量を毎日ですか!」 「大した事はない」  ……大ありだと思う。  ズキリと心が痛む。これだけの仕事をして、更に会いに来てくれていたのだ。日のあるうちにきて、戻って……。そんなの、倒れて当然だ。 「僕もお手伝いします!」     
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