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――だからって、忘れていい事じゃない。
「うぅ……っ!」
倒れ込んで、痛みに耐えられなくて視界が消えていく。
でもラウルは手放せなかった。痛くて苦しい記憶の欠片を手放したら、もう二度と大事な事を思い出せない気がしていた。
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善良な主人だと思っていたアンドリューは、僕を殺し屋にした。僕だけじゃない、他の多くの子供達も。
僕は庭に小さな墓を作った。埋める物もないけれど、そうすることでここに友人が帰ってきてくれる気がした。
「ラウル」
「スチュアートさん」
後から声をかけられて、振り向いた。一番の古株のスチュアートが立っていて、悲しそうな顔で僕を見ていた。
「お前はいつまで経ってもまともだ」
「みんな、そうでしょ?」
「どうだかな。見てみろ、皆何かの感覚がおかしくなってる。しくじった奴が消されても、お前以外は涙も流さない」
そう言われると悲しい。僕だって麻痺してしまいそうだ。
今日死んだ子は、同い年でとても仲が良かった。けれど足を負傷して……もう使えないからと処分された。
どうして、そんな事ができるのだろう。昨日まで一緒に生活していたんじゃないの?
思いだして、また涙が出た。そこに、ハンカチが一枚差し出された。
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