404人が本棚に入れています
本棚に追加
「使ってください、ラウル」
「クラークさん……」
皆のお母さん、皆のお姉さん。そんな優しいクラーク。
僕は、この兄弟にお世話になった。皆を引っ張るスチュアート、優しいクラーク、ガキ大将のウォルターと、体の弱いホレス。
この兄弟がいて、この組織は回っている。残酷な主は命令するだけ。僕達の事は何も、考えていない。
「スチュアートさん、僕……やっぱりこれは、間違っていると思います」
友人の墓の前で、俯きながら僕は伝えた。クラークは少し驚いたけれど、スチュアートは驚かなかった。
「では、どうする?」
「……騎士団に、自首します」
「ラウル、それは!」
クラークが驚き慌てて止めようとした。けれど隣のスチュアートがそれを腕で制してしまう。静かな瞳が、ジッとこちらを見ている。
「お前は、一番まともで賢いからな」
「……駄目、ですよね」
「いや、好きにしろ」
「え?」
静かな声に抑揚はない。けれど気遣わしい瞳は、声以上に感情を伝えてくれる。
「いけませんラウル。僕達の罪がどれほどか分かっているでしょう? こんな事を騎士団に告発すれば貴方だってただじゃすまない。処刑を免れません」
最初のコメントを投稿しよう!