忘れたくない人(ラウル)

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 末のホレスは体が弱く、よく咳が止まらなくなる。色も白くて、痩せていて。だからアジトでずっと留守番だ。  アンドリューが「役立たず」と言っているのを聞いた事がある。だが同時にスチュアートとクラークがいるなら、面倒を見るとも言われていた。 「ウォルターは……」  彼は僕の一つ上だから、まだ可能性はある。必死に言い募った。だが、スチュアートの言葉は否定的だった。 「あいつはアンドリューを善人だと思い込んでいる。衣食住の面倒を見てくれて、ホレスの治療をしてくれて、兄弟で一緒にいられる。それは全てあの男のおかげだと。そんな奴を連れて行けば、上手く行かない。行くならお前だけだ、ラウル」  そこまで言われてしまったら、僕だってどうしたらいいものか。  戸惑いながら、ふと背後で死んだ友人が笑った気がした。 「……行きます」 「……有り難う。お前の勇気で、これ以上俺達のような奴を作らずに済む」  寂しそうな笑顔が、僕の中に残っていった。  シウスを襲ったスチュアートと、僕は戦った。シウス様を守りたかった。奪うことしか知らないダガーが、初めて誰かを守る為に使われる。  切り結んだスチュアートは、ギラギラした目のままで小さく語りかけてきた。 「生きていたか。良かったな」 「ス……」     
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