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この愛は、幸せばかりじゃない。痛くて、苦しくて。でもそれ以上に幸せで、失いがたいものなんだ。
シウスが側に座る。ラウルは体を起こして、布団を握った。
「……お知りに、なりましたよね?」
「あぁ。だが私は!」
「僕は貴方に伝えなかった。貴方がくれる優しさが嬉しかった。木から落ちたあの時、僕は貴方に恋をした。貴方の側が心地よくて、無邪気に居られる事が幸せで、与えてもらえるものが幸せでした。だからいつしか罪に蓋をして、贖いを忘れて、自分を騎士だと思い込んだ」
本当はそんな資格、ありはしない。罪人である事を忘れて、正義だと思い込んで。
でも、違う。それを思い出すようになったのは、シウスが本気で結婚を申し込むようになってから。
「僕は貴方に相応しく無い。結婚なんて……僕が罪人だと知れたらどうなってしまうんだろう。僕の罪を貴方が知ったら、結婚どころか今の関係もどうなってしまうんだろう。思うと怖くて……でも、知らせないのも違う。思うと苦しくて、たまらなくなってしまって」
「ラウル……」
「何度も言おうと思っていました。でも……寸前で怖くなって言えなかった。僕はまだ刑期も明けていない。償いの最中で、なんて言えばいい。こんなの……醜くて歪で……」
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