好きでいて、いいですか?(ラウル)

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 籍を入れ、晴れて家族になった日、二人の部屋で冷たい水に手を浸し、神の名を口にして誓いの言葉を述べた。今世を共に生きる事と、来世もまた巡り会えるように。 「よいのじゃ、私達はこのくらい慎ましくて。のぉ、ラウル」 「はい、シウス」  隣りに座る人を見上げ、ニッコリと微笑む。その先ではシウスがほんのりと恥ずかしげに頬を染めていた。 「あっ、ラウル呼び方変えたの?」 「はい。今は、その……家族、ですし」  なんだか、改めて言うと恥ずかしい。照れてしまって、内側からカッカしてくる。これはお酒のせいじゃないはずだ。 「もぉ、二人とも何年目なのさ。初々しいんだけどー」 「だって、これは……まだ慣れないんです!」  未だに名前で呼ぶと恥ずかしくなる。でもそれはお互い様。要求したにも関わらず、シウスは毎回照れている。 「羨ましいな、まったく」 「俺はとっくに名前で呼んでるよ、ファウスト。他に何か要求あるの?」 「……」 「今日の夜は自室で寝る」 「ランバート!」  意味深な瞳で見つめる意味を理解したらしいランバートの釣れない物言いに、ファウストは不満そうな顔をしている。  ファウストは案外煽られると止まらないらしい。今回のこれも、煽られているのだろうか。 「クラウル様、どうして俺の腰を掴むんです」 「意味はない」 「では、離して下さい」 「……年末はお前が風邪を引いてゆっくりできなかった」     
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