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覚えている。暖炉の前のソファーで、何度も貫かれていたこと。気持ち良くて幸せで、恥ずかしい事も言えた。求められる事や、手加減されない事が幸せだった。
手が触れてくる。水色の瞳が誘惑をする。ラウルはそっとキスをした。触れるだけの、簡単なもの。でも気持ちは違う。これは、誘う為のキス。
「可愛かったぞ」
「もう一度、しますか?」
「ん? いや、今日はあそこではない。ちゃんと、ベッドでな」
するんだ……
それは分かっていたけれど、改めて口にされるとドキドキする。
事件後、互いの体調を考えたりもしてキス以上はしなかった。でも本当はして欲しかった。落ち着かなくて、体も心も全部シウスで埋めてもらいたかった。
それを言い出せなかったのは、ウォルターとの事があったから。やっぱり、他の男に散々穢された体は嫌なんじゃないか。そう思ったら、口が重くなった。
やっぱり同じ事を繰り返す。溜息が出るが、少しずつ治して行かなければいけない。これで今回、とても辛い思いをシウスにさせてしまった。そして自分も、辛い思いをしたのだから。
「ラウル?」
「嫌じゃ、ありませんか? その……僕は他の男に……」
どれほど注がれたかなんて、覚えていない。キスも、前戯もない暴力だった。けれど穢された事に変わりはないんだ。
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