凄惨な新年

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 だが酷いのは、母親だった。明らかに乱暴を受けている。父親と娘は服を着ているのに対し、母親は全裸。胸や腹にもナイフで裂いた傷があるが、おそらく致命傷ではない。首を手で締められた跡が紫色になって残っている。これが死因だろう。  それにしたって、死後どれだけ経っているのか。多分だが、昨夜の事ではない。室内に充満した臭いがそれを物語っている。 「やぁ、来たねランバート」 「兄さん、検死有り難う」  先に来て検死をしていたハムレットに礼を述べれば、嬉しそうな顔はしても以前のように飛びつきはしない。流石の彼もこの現状でそれは憚られたのだろうか。 「何があったんだ」 「一家惨殺」 「それは分かっている。状況は?」 「早朝に人が家に駆け込んできた。キフラスが自警団にいる事は町の周知だから、呼びに来た。駆け込んできたのはこの家に期間限定で通っている家政婦。新年明から仕事再開で朝食作りに来たらこれだって」  ハムレットが指を指す先では、三十代の女性が青い顔をして震えている。とても状況を話せる状態には見えなかった。 「検死の結果は?」 「旦那と娘は失血死。頸動脈切断の一撃だね」 「母親は……窒息死?」 「そう。腹や胸の傷は生きたままつけられている。それと、乱暴されている。解剖しないと何ともだけど、多分犯されながら首を絞められて死んでる。そして、一番最初に死んでる」 「……夫と娘の前で、母親を乱暴したのか」  異常、としか言いようがない。そして、残酷だ。     
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