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王都に蔓延した結婚ブームも年が明ける頃には落ち着いた。騎士団内では未だに少々お花畑な奴等もいるが、仕事に張り合いが出ているのか今の所プラスになっている。
新年一月二日、シウスはラウルと共に彼の生家を訪れようとしている。
「あの、本当に来るんですか?」
本日何度目か分からないこのやりとりに、シウスは多少の疑問と心苦しさを感じている。
「いけないのかえ?」
「そういうんじゃ……」
ラウルはそこから先を、なかなか話してはくれない。
シウスはラウルに結婚を迫っている。それというのも付き合って一年の間に、シウスはラウルに宣言していた。ラウルが二十歳になれば結婚しようと。
最初は自信がなかった。エル族という特殊な身の上であるシウスを受け入れてくれるか。人ならざる者の声を聞くシウスを、気味悪いと言う者が多い。ラウルも、そうかもしれない。そう思っていた。ようは、別れる事をどこかで想定していたのだ。
だが、ラウルはそうではなかった。エルの誘拐事件を共にしたラウルは、シウスの出自などを知っても嫌わずに受け入れてくれた。
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