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「ラウル兄ちゃん!」
一人が声を上げればあっという間。次から次へと子供達が集まってくる。
ラウルは柵を開けて中に入ると、飛びついてくる子供達を受け止めて笑っていた。
「大きくなったね、みんな」
「へへっ、そうでしょ?」
そんな事を言いながらじゃれる子供とラウルを呆然と見ているシウスへ、ラウルの視線が向けられた。
「黙っていて、ごめんなさい。ここが、僕の家なんです」
「教会が?」
「はい。僕は……孤児なんです」
申し訳なく悲しげなラウルの言葉に、シウスは目を丸くしていた。
知らなかった。庶民出であることは分かっていたが、まさか孤児だったとは。もし本当にそうならば、この子はとても才能豊かだったのだ。教会でも教育はするが、騎士団のレベルまでくるには相当の努力が必要だ。
これが、ラウルの隠したかった事なのか? だとしたら、何の問題がある。
「ラウル兄ちゃん、この人誰?」
不思議そうにする子供達を見て、シウスはやんわりと微笑み中に入る。そして、子供達の視線に合わせるためにしゃがんだ。
「ラウル兄ちゃんの友人で、シウスじゃ。私も仲間に入れてくれるかのぉ?」
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