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ラウルの驚いた顔は、次に明るい笑みに変わる。久々に見る憂いの無い表情にシウスも嬉しくなる。
「シウス兄ちゃん?」
「そうじゃ、シウス兄ちゃんじゃ」
「変な話し方!」
「あっ、コラ!」
子供達がはやし立て、ラウルが怒り、シウスが笑う。笑い声を上げながら散り散りに走る子供達が庭へと雪崩れ込む、それを入れ違いに一人のシスターがこちらへと近づいてきた。
年の頃は六十代近いだろうか。黒い瞳で皺が多いそのシスターはシウスを見て一礼した。
「貴方が、シウス様でしょうか?」
「え? えぇ」
立ち上がったシウスに、シスターは落ち着いた様子で頷いている。シウスの目を見て、そして安心した笑みを見せた。
「紹介が遅れました。私はこの教会のシスターで、ドロシアと申します。ラウルがいつもお世話になっております」
「あっ、初めまして! 騎士団のシウスと申します。こちらこそ、ラウル君とは親しくさせて頂いております」
緊張から、つい貴族連中と話すような帝国語で挨拶をしたシウスに、ラウルは驚き、次には破顔する。途端に気恥ずかしく、シウスは赤くなってしまった。
「シウス様、緊張してる?」
「それは、勿論じゃ。お前の母に挨拶をしておるのだから」
当然じゃないかと言うシウスに、シスタードロシアも笑い、皺の多い目元を和らげている。
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