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なんとも厳しそうで、かつ優しげな女性だ。年齢を重ねながらも矍鑠とし、慈悲深く感じる。貴族の老婦人でもなかなか、このような女性は珍しいものだ。
「宜しければ中へどうぞ」
先を歩くドロシアに続いて、シウスとラウルも教会の中へと入っていった。
教会の奥にある院長室のソファーに腰を下ろしたシウスは、出されたお茶を飲みながら外で遊ぶ子供達を見ている。丁度雪合戦が始まった所だ。
「驚かれたでしょ?」
「え?」
お土産の焼き菓子が出される音と共に、ドロシアが苦笑している。ラウルもどこかバツの悪い顔をしている。
「何が、でしょうか?」
「この子、教会出身だと貴方に明かしていなかったのではありませんか?」
「あぁ」
確かにそれは初耳だった。
ラウルは俯きながらもチラチラとシウスの顔を見ている。どんな反応が返ってくるのか、恐れているように。
だがこれが、何の問題になるというのだろう。教会の孤児院育ちだから、何か問題があるのか。そんな事は当然ないはずだ。
ニッコリと笑みを浮かべたシウスは、愛しげな瞳を細めラウルの頭を撫でる。見上げてくるライトブラウンの瞳に浮かぶ不安全てを、シウスは拭い去ってやりたかった。
「驚きはしましたが、何の問題があろうことか。この子はこの子です。私が愛する、ただ一人の子です」
「シウス様」
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