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愛らしい瞳が丸く見開かれ、次には嬉しそうにクシャリとする。許されるならば今ここで抱きしめて、愛していると囁きながらキスをしてやりたいのだが……流石にその度胸はない。
ドロシアのほうは嬉しそうな笑みを浮かべて頷いている。
「嫌ではありませんか? 貴族の、しかも地位のある方が教会育ちの孤児を気に留めているだなんて」
「生憎、私は貴族とは名ばかりの野生育ち。エルの民は森に住み、集落全体で子を育てる大所帯。故に、このように子供が多く賑やかな場の方が懐かしいくらいじゃ。それに、孤児であろうとこの子が真っ当に育った事は、普段の彼を見ていれば分かる事。なんぞ、問題などあるものか」
ラウルはとても真っ直ぐな子だ。優しく、芯があり、そして度量の大きな子だ。
だが隣のラウルは途端に萎れていく。どうして今、このような顔をするのか。
分からない。ラウルの憂いはこれではないのか? 他にも何か、言えぬ事があるのか。それに、クラウルがラウルの入団時の事を明かさぬ事も気になっている。入団理由や、経緯もあるはずなのに。
何かがずれている。それを感じているのに踏み込めないシウスはそれでもラウルを離せない。愛している。これだけはどんなに時が経とうと、秘密を知ろうと変わらないのだから。
「シスタードロシア」
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