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シウスの硬い声に、ドロシアは視線を向ける。緊張した空気を感じたのか、ラウルも隣で緊張したように思う。
「私はこの子をもらい受けたい。この子との結婚を考えている」
「シウス様……」
「生涯、この子だけを大切にすると誓う。この子が大切にしているこの教会も、共に大切にして行ければと思っている。どうか、お許しを頂きたい」
きっちりと頭を下げたシウスに対し、ドロシアは静かに頷いて、次に隣のラウルへと視線を向けた。
「お前はどう思っているのです、ラウル」
「あの、僕は……」
「結婚となれば、思う事を言い合うくらいでなければなりません。貴方は、シウスさんとの今後をどのように考えているのですか?」
ラウルは俯き、膝の上で手を握ったまま暫く言葉がない。今にも泣き出しそうな顔を見ると、胸が痛む。本当に、拒まれているのかと。
「もう少し、考えたいです」
「ラウル……」
「シウス様の事が嫌いなんじゃなくて! 僕自身の事なんです。もう少し、整理をつけたいんです。ごめんなさい、シウス様」
大きなライトブラウンの瞳から、今にも涙がこぼれてしまいそうだった。その目元を、シウスは優しく拭ってやる。
胸は痛む。苦しくもある。だが最初に自分勝手で待たせたのはシウスだ。
「分かった、待とう」
「いい、んですか?」
「急く事ではないからの」
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