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言えば、ようやく曇った瞳に明るさが戻る。微笑んだ愛らしい唇に思わずキスをすると、ラウルは真っ赤になって俯いてしまった。
その後、子供達にせっつかれるようにラウルは庭に出て雪だるまを作っている。それを見つめながら、シウスは複雑だった。
拒まれているのではない。ラウル自身の問題。どんな問題を抱えているのか。孤児というのを気にしているのか? それとも、もっと違う事なのか?
調べられれば良いのに、その材料をラウルも、そしてクラウルも教えてくれない。情報があり、それを調べ、対策をするのが宰相府。そもそもの材料である情報を隠されてはどうする事もできない。
何度目かの溜息。その隣りに、人が座った。
「あの子は頑固でしょう?」
「シスタードロシア」
「昔から、皆のお兄さんなのですよ。我慢強くて、大事な事は辛くてもなかなか言わないのです」
シウスはゆっくりと頷く。
ラウルはいつも他人の事に一生懸命で、自分の事はあまり言わない。甘えてくるのも恥ずかしそうにしている。辛いという言葉を、あまり聞いた事がない。
「ラウルはずっと、この教会で?」
「ある春の日、この教会の前にバスケットに入れられて。名前もつけられていなかったので、この教会でつけたのです。それから十四歳まで、ずっと」
「十四まで?」
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