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高級で不相応だと言ったラウルも、これは仕事だと言えば承諾した。そして、私の隣で劇を食い入るように見て、歌を楽しみ、涙を流したら笑ったり。
素直な様子が手に取るように分かる。この子の心は綺麗な物を綺麗だと受け取る。同じ感性で、私を綺麗だと言ってくれる。
「また……今度はプライベートで誘いたい」
見終わった後、私はそう言って誘った。この子の関心事が分かったのだから、当然だ。
ラウルは戸惑いながらも楽しかったのか、顔を真っ赤にして頷いた。
その帰り道でのことだ、暗殺者が大挙して押し寄せたのは。
私はそれに応戦した。ラウルは一年目、到底戦うは不得手と思っていた。だが実際は違う。あの子は私の前に立ち、猛然と少年達を倒していった。
この時、あの子はどんな気持ちだった? かつての仲間を自らの手で殺すのは、どんなにか悲しい事だろう。
知らなかった私はあの子を心配した。血を流すあの子の傷を心配したのだ。だが本当に気遣わねばならなかったのは、あの子の心が流す涙だったに違いない。
こうして事件は解決した。アンドリューの屋敷を抑えたクラウルはその後取り調べまで自身でやり、私はラウルと共に休暇を言い渡された。襲われたのだし、有給もある。ラウルも怪我があるからと。
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