思い出(シウス)

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 様子がおかしい、とはどういう意味だ。何があった!  慌ててベッドから起き上がろうとして、目眩がして倒れそうになる。ファウストが支え、エリオットを呼ぼうとしたがシウスは止めた。この状態で奴が外出を許可するとは思えなかったのだ。 「シウス!」 「責めは私が受ける。ランバート、連れて行っておくれ」 「……馬車を用意します」 「そんな悠長な……」 「今の貴方では徒歩の方が時間がかかります。それに、俺がエリオット様に殺されます」  言うが早いか、ランバートは踵を返してしまう。ファウストが側に置いていた服を渡し、随分とデカイコートを貸してくれた。  程なくして粗末だが馬車が用意され、ラビとシウスがそれに乗り込む。御者をするランバートが手綱を握り、滑るように雪道を走り出していった。 「一体何があったのだ、ラビ。ラウルは……」 「俺にも分かんないんだ。ただ、シウス兄ちゃんが昨日も今日も来なかったから……」  俯き、戸惑うラビはそれしか言わない。眠っている間に、何があったのだ。  この子は教会の中でも一番のリーダーで人懐っこい。そして、行動力のある子だ。きっとラウルを慕い、心配して駆けてきてくれたのだ。     
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