思い出(シウス)

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「昨日、お医者先生が来てシウス兄ちゃん少し来れなくなるって話してて……その時は寂しそうだったけど、平気そうだった。でも今日になってずっと、泣いてるんだ」 「え?」 「ずっと。シスターも困っちゃって」  泣いて、いる? それは、期待しても良いのだろうか。自惚れても良いのだろうか。  馬車はあっという間に教会に到着する。ランバートが体を支えて教会に入り、シスタードロシアが驚きながらも案内をしてくれた。  扉の前、ドキドキしながら押し開けたその先で、ラウルはベッドに腰を下ろしたまま静かに泣き続けていた。  愛らしいライトブラウンの瞳を濡らした彼はシウスを見て驚き、そして更に涙をこぼしだした。 「ラウル」 「シウス、様……どうして……」 「様子が変だと聞いて。どうしたのだ」  近づいて膝をつき、そっと頬に手を添える。どれほど泣いたのか、瞳は赤く腫れてしまっている。それでもまだ足りないのか、クシャリと顔を歪ませた。 「わから、ないんです」 「分からない?」 「貴方が体調を崩したと聞いて、心配で……なのに、寂しくて仕方がないんです」 「ラウル……」 「寂しくて、会いたくて、胸の辺りがずっと苦しくて堪らないんです。声が聞きたくて、名前を呼んで欲しくて堪らないんです。会えないと思えば思う程息ができなくて……涙が、止まらないんです」     
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