第17章 縁ぎりぎりの水

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そう、焦る必要なんかない。わたしはキッチンで朝食の食器を片付け、にゃわにゃわ鳴き声を上げながら機嫌よくころころと床の上で遊び回る仔猫たちを尻目に洗濯機に洗剤を入れながら思う。 彼もわたしも、今はお互い離れたくない。って思ってることははっきりした。彼はわたしを手放したくないし、わたしはここから出て行きたくはない。 つまりはわたしたちには時間がある。今すぐ急いで結論を出さなくていいんだ。 エニシダさんは飼い主が自分の猫を大事にするみたいにわたしを保護したいだけじゃなく、男性としてわたしに惹きつけられる気持ちがあることがわかった。一方でわたしの方は彼のことを大好きでいつでも受け入れられる準備があるけど、決して急がないし彼が決断に時間をかけてもちゃんと待てる、早く心を決めないからって焦れて彼を見切ったりさっさと出て行ったりはしないって伝えることができた。 このことで二人とも心のどこかで安堵できてひと息つけた気がする。お互い焦って変な思い込みに嵌り込んだり、慌てておかしな結論に飛びついたりしなくて済むと思う。 これまで通り、相手の気持ちを精一杯想像して思いやって過ごそう。その中でこれからどうすればいいのかは自ずと明らかになっていくはずだ。 それでまた今まで通り変わらない毎日が戻ってきた、って思ったけど。ひとつだけはっきりした変化があった。     
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