第17章 縁ぎりぎりの水

3/42
前へ
/80ページ
次へ
彼は起きてる時にわたしと猫団子を作らなくなった。 つまり、これまでみたいにふとした拍子にわたしを呼んで、膝の上に乗せたり抱きしめたりはしない。それに気づいた時はさすがにちょっと気落ちした。 距離を置いたりしないで、って訴えたのに。やっぱり態度変わるのか。まあ、そこは仕方ない面もあるのかな。 ついこの前までのエニシダさんは、わたしに触れたい、抱きしめたいって感じたとしてもそれが男性としての欲求から来てるって自覚はほとんどなかったはず。だから無邪気にも要望をそのまま言葉にしてわたしに求めるのをためらわずに済んでた。薄々何か違和感があったとしても、それは無理にもねじ曲げて見ないふりでさっと心の隅に追いやっていたんだろう。 だけど、わたしをきつく抱きすくめる行為のその先にあるものを彼本人も対象であるわたしもわかってしまった。 一度自覚してしまえばもう、気づかないふりはできない。お互いを暖めあうだけ、柔らかな感触を味わうだけじゃない。今はそれでよくてもそのうちそれじゃ満足できなくなる。服越しじゃなく直に。表面を寄せ合うだけじゃ足りなくて、お互いの身体深く中まで結ばれて、関係をしっかりと確かなものにして…。     
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加