第17章 縁ぎりぎりの水

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ただ優しく抱き合うだけでも一旦は考えてしまったその先をちらとも想起させられずには済まない。だったら、これまでみたいに気軽に触れるってわけにはいかなくても。それは仕方ない、自然に今まで通りって方が無理ってこともあるか。 割り切れない気持ちをなんとか収めてそう納得しようとしてるのに。彼がわたしに触れなくなったのは結局昼間だけのことだった。 夜、猫たちにまとわりつかれながら布団に入るわたしの傍らに片膝をつき、これまでと変わらず囁きかける。 「じゃあ実生、あとで。向こうで待ってるから。…もし眠っちゃったら、迎えに来るよ」 そうして猫たちが寝入った後のノックの音を待ちわびて、いそいそと寝室のドアを開ける。 ベッドの中で火照る身体をぎゅう、と押しつけ合いながらわたしは疑念を抑えきれずつい尋ねた。 「昼間起きてる時は抱いてくれないのに。夜寝るときはいいの?」 彼は当たり前のことを訊かれたみたいに確信に満ちて答えた。 「だって、こんなに近くで暮らしてるのに。一日ずっと触れられない、抱きしめられないなんて無理。我慢できないよ。…やっぱり眠るときくらい、実生と一緒にいたい」 甘い声ですりすりされて喉から何かがこみ上げ、身体のあちこち変なところが熱くなる。あんまり刺激されると。襲っちゃうよ、真面目な話。 「じゃあなんで昼間は?最近なんだかよそよそしいよ、膝に乗せてもくれないし」     
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