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「まぁ、わざと見せつけてるのは俺の好きな子だけじゃないけど…」
ぼそっとつぶやいたその言葉に反応もできないうちに、私の腕は誰かの手によって引っ張られる。
「何、…っ?」
「…美佳先輩、」
引っ張られた先を見ると、そこにいたのはさっきまで話題の中心だった颯くんだった。
「颯くん?」
「…稜先輩、どういうつもりですか」
「俺?別にどういうつもりでもないけど」
にやり、そんな形容詞がつくような不敵な笑みを浮かべる稜。
なんで颯くんはちょっと怒ってて、稜は楽しそうなんだろう。
事態が把握できないまま、二人を見つめる。
「ただ、誰かさんがうじうじしてるから。別にとっちゃってもいいかな?って思って」
「…っ!!」
「でもまぁ、乗り込んできた後輩くんに免じて今は譲ってあげるよ。まだうじうじしたいなら、後は知らないけど」
ぐっ、と私の腕をつかむ力が強くなったかと思うと、颯くんは私の方へ向き直る。
「美佳先輩。…ちょっと、お話があって。今いいですか?」
「あ、今?ええと…」
ちらりと稜を見ると、ひらひらと手を振って、まるでごゆっくりとでも言いたげな表情。
少し引っ掛かるところはあるけれど、まぁ後から聞けばいいか。
そう思い直して、私は颯くんの申し出にこくりと頷くのだった。
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