通勤奇譚

通勤時間

いつもより大きめのカバンにスーツを詰め込んで家を出た。
先週までより早い時間だ。自転車通勤のため時間がかかる上に、会社に入る前にスパで汗を流し着替える必要があるからだ。
早朝のまだヒンヤリとした空気が心地よい。
気合いを入れてペダルを漕ぎだした。

ちらほらと自分と同じような自転車通勤の人がいる。自分と違う方向へ遠ざかっていく。
(あっちは工場地帯だったな)
心の中でエールを送り見送った。仲間がいることに安心感を覚え、力強く自転車を進ませる。

いつも乗る通勤電車が近くを通る。もう混みだした車内を見て、自転車通勤にして良かったと思う。
当たり前だか電車はすぐに自分を追い越して去っていった。