カメレオン男

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本音は、一度くらい本気で愛されてみたい。 ゼロに等しい可能性の中で、今日も職場では偽りの自分を演じている。 「早乙女。今日って夜は空いてるか?」 「あぁ、予定はないけど。」 エレベーターホールで背後から声をかけられ、ドキリとする。 「良い店見つけたんだ。行かないか? それに…話しておきたい事もあるし。」 「わかった。じゃあ、仕事終わったら連絡して。 こっちは定時で上がれるだろうからさ。」 「了解!久々だな、飲みに行くの。 最近付き合い悪かったけど、彼女でも出来た?」 「いや、いないよ。彼女なんて。」 「みんな見る目がないよな。 早乙女はさ、気は利くしノリも良いし、優しいし性格だって良いし、それに」 「もういいって!恥ずかしいよ。」 「何でだろうな…。俺が女なら、間違いなく早乙女を選ぶのにさ。」 それは、僕がそう演じてるからだよ。少しでも君に良く思われたくて。
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