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彼が去って行くのを横目で確かめて、息を吐いた。
何が起こったのか、理解ができない。
グラスを手に取り、手のひらでコースターを隠した。
目の前に立った若い青年は、僕に何て言った?
指を開いた隙間から、コースターの文字を見る。
几帳面な角張った文字で書かれた名前を目で追い、そっと彼のいる方へ目を向ける。
モデルのようなすらりと高い背と、小さな顔、整った目鼻立ち。
明らかにモテそうな風貌。
からかわれたのだろうか。
それならそれで、一夜だけ楽しむのもいいだろう。
さっき触れられた手が熱い。
彼の言葉を鵜呑みにして、ここで待っていたら…どうなる?
どうすれば良いのか、僕自身どうしたいのか、答えがわからない。
グラスの底にわずかに残ったビールを見つめ、考えていた。
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