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「ねぇ、要さん?
本当は陸の事どう思ってるの?」
どうもこうもない…。今日初めて話したし、今まで彼の存在も知らなかったのに。
それが突然、あんな風に言われても、正直何もわからない。
実は全てがイタズラで、騙されているのだとしたら。
寂しそうな中年をからかっているのだとしたら。
騙された振りでも、たとえ僅かでも、恋人のいる気分にひたれたら。
嘘でも愛されてると感じながら過ごせたら…。
黙ってしまった僕に、マオ君はピシャリと言った。
「要さん、もう陸の事意識してるじゃん。」
「そんな事ない」と言おうとして、言い切ることが出来ず、目を逸らし黙りこむ。
帰り支度を終えて、彼が出て来るのが見えた。
急に鼓動は早くなり、息が苦しい。
「マオ君。僕…やっぱり帰るよ。
これ、一緒に払っといて!」
テーブルにお金を置いて、逃げるように席を立つ。
彼に気付かれないように、足早に店を出た。
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