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「ここでいいですか?」
黙ったまま、何も言わずに彼の後を付いて歩き、着いた場所は、裏路地にある古い喫茶店だった。
「いいよ。入ろうか。」
浮かれた気持ちを悟られないように、落ち着いた声で答え、彼の先に立って店に入った。
コーヒーを頼み、ようやく真っ直ぐに彼を見ることが出来た。
彼も緊張しているのか、落ち着かない様子で言葉を選ぶように話し始めた。
「あの、この前は…すみませんでした。
俺、その…自分ばっかり、焦っていて…。
貴方に逢えたら、ああしよう、こう言おうって…。
突然、…迷惑…でしたよね?」
そんな事ない。僕も嬉しかった。そう伝えたいのに、僕の口から出てきた言葉は、別のものだった。
「あぁ…まぁ。そうだね。」
さも、何でもなかった事のように素っ気なく、聞こえたに違いない。
僕自身、何でこんな態度を取ってしまったのか、よく分からない。
「まぁ、迷惑ではないけど…驚いたかな。
君みたいな若い子に声かけられるなんて中々ないから。」
言い訳のように言葉を繋げ、彼の出方を待った。
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