コイゴコロ

11/14
前へ
/352ページ
次へ
クスクスと笑いながら、口元から白い歯がこぼれる。 初めて見る寛いだ笑顔に、心が撃ち抜かれた。 ずっと、美しいこの笑顔を守りたい。傍で見続けたいと思いながら、無意識に「綺麗だ…。」と呟いていた。 彼には聞こえていなかったのか、気に留める様子もない。 「そう言えば、そうだったね。 早乙女要です。陸君の好きなように呼んでもらって構わないよ。」 微笑みながら、柔らかい視線を俺に向け、楽しそうに言い、笑顔に見惚れていた俺の顔を不思議そうに覗き込んだ。 不意打ちで目の前に現れた彼を、ドギマギして見ていられない。 さっきまであんなに、グイグイと気持ちを押し付けていたのに、急に恥ずかしくなってしまった。 「要さんって、呼んでいい?」 「もちろん。 それで?この後、僕はどうしたら良いのかな。 陸君は仕事でしょ?」 そう言われて、慌てた。 音がしそうな勢いで、店の壁に掛けられた時計を見ると、まだ時間に余裕はある。
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

872人が本棚に入れています
本棚に追加