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クスクスと笑いながら、口元から白い歯がこぼれる。
初めて見る寛いだ笑顔に、心が撃ち抜かれた。
ずっと、美しいこの笑顔を守りたい。傍で見続けたいと思いながら、無意識に「綺麗だ…。」と呟いていた。
彼には聞こえていなかったのか、気に留める様子もない。
「そう言えば、そうだったね。
早乙女要です。陸君の好きなように呼んでもらって構わないよ。」
微笑みながら、柔らかい視線を俺に向け、楽しそうに言い、笑顔に見惚れていた俺の顔を不思議そうに覗き込んだ。
不意打ちで目の前に現れた彼を、ドギマギして見ていられない。
さっきまであんなに、グイグイと気持ちを押し付けていたのに、急に恥ずかしくなってしまった。
「要さんって、呼んでいい?」
「もちろん。
それで?この後、僕はどうしたら良いのかな。
陸君は仕事でしょ?」
そう言われて、慌てた。
音がしそうな勢いで、店の壁に掛けられた時計を見ると、まだ時間に余裕はある。
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