コイゴコロ

12/14
前へ
/352ページ
次へ
「要さんさえよければ、少しだけ話していたいな。」 「いいよ。店、変える?」 首を横に振り、要さんの隣へ移動した。 「要さんの事、ずっと見ていたいんだけど、俺、ドキドキしちゃって…。 それに…。」 そっと手に触れ、指先を絡めた。 「手を繋ぎたい。いい?」 「もう、繋いでるじゃない。」 握り返された指先が熱い。 数える程度の客と、流れる古い歌謡曲。 どっしりとしたソファーが空間を遮り、自然と二人きりの空間が生まれる。 俺は、いくつもの質問を浴びせ、要さんは、それらひとつひとつに丁寧に答えてくれた。 歳は36歳。プログラマーの仕事をしている。実家は千葉で、兄弟はいない。 マンションに独り暮らし。 女の人とは付き合ったことがない。 好みのタイプは、タフで物腰の柔らかい人。 「陸君は…ちょっと違うかな?」 あっさりと、俺を突き落としておきながら、優しく笑いかける。 「今はそれでもいいよ。 いつか、俺を好きになってくれたらいい。」 強がって言い返し、さらにたずねた。 「今まで付き合った人は?」
/352ページ

最初のコメントを投稿しよう!

872人が本棚に入れています
本棚に追加