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「要さんさえよければ、少しだけ話していたいな。」
「いいよ。店、変える?」
首を横に振り、要さんの隣へ移動した。
「要さんの事、ずっと見ていたいんだけど、俺、ドキドキしちゃって…。
それに…。」
そっと手に触れ、指先を絡めた。
「手を繋ぎたい。いい?」
「もう、繋いでるじゃない。」
握り返された指先が熱い。
数える程度の客と、流れる古い歌謡曲。
どっしりとしたソファーが空間を遮り、自然と二人きりの空間が生まれる。
俺は、いくつもの質問を浴びせ、要さんは、それらひとつひとつに丁寧に答えてくれた。
歳は36歳。プログラマーの仕事をしている。実家は千葉で、兄弟はいない。
マンションに独り暮らし。
女の人とは付き合ったことがない。
好みのタイプは、タフで物腰の柔らかい人。
「陸君は…ちょっと違うかな?」
あっさりと、俺を突き落としておきながら、優しく笑いかける。
「今はそれでもいいよ。
いつか、俺を好きになってくれたらいい。」
強がって言い返し、さらにたずねた。
「今まで付き合った人は?」
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