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「バツイチオオカミねえ。」とお母さんはキッチンで笑う。私は
「違うってば。」と持ってきたガトーショコラのケーキを用意しながら機嫌の悪い声を出した。
「そうねえ。独身バツイチでかっこ良くて、お医者さん。
美雨、しょうがないんじゃないの?」と母は私をからかう。
「しょうがなくありません。こ、婚約したんだから。」
と言って、私は右手の薬指に光る金色の指輪をかざして見つめる。
強引にプロポーズさせてしまった。と、ちょっと反省する。
「強引だったかな?」と母の顔を見ると、
「そう?菅原先生嬉しそうだったと思うけど。
きっと、美雨が結婚したいって言い出さなければ、ずーっと待ってたかも。」と笑う。
「でも、この間、先生が美雨を探しに来た時、
この人、きちんと美雨が好きなんだって思ったから、
結婚も早いかなって、思ったわ。
相手は経済力のある大人だし。その気になればいつでも結婚出来る。
ちょっと、美雨は結婚する年齢には早いかなって思ったけど、
6月になれば23歳よね。まあ、少し私は寂しい気がしたけど、
しばらくこの街に住んでもらえそうだし、良かった。かな。」と私の顔を覗く。
私はちょっと胸が熱くなって、涙が溢れる。母は私の事をいつも応援してくれる。
「美雨、なんで泣くのよ。」と母も涙が溢れそうだ。
2人でちょっと抱き合って笑う。
「紅茶、苦くなっちゃう。」と母は慌てて、紅茶をカップに注いで、
「美雨の初めて作ったケーキ。いただきましょうか。」
とリビングにいる父に笑いかけた。
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