オオカミの秘密

19/24
前へ
/253ページ
次へ
「あいつ、おかしくないか?」と指をさす。 指の先を見ると、ウサギが松葉杖で、腕に包帯を巻いた 若い男に手を貸している。 僕は弾かれたように走り出した。 杖のつき方がおかしい。 ウサギは身障者用のトイレに向かっている。 待て。 そいつは注意のメールで最近回ってきてた不審者じゃないか? 怪我人を装って、若い女の看護師や介護人をトイレに案内させて襲う。 そんなとんでもないやからじゃないのか? 僕は身障者トイレのドアが自動で閉まる前に腕を突っ込んだ。 間に合った。 息を切らしながら、ドアをこじ開ける、 ウサギが驚いた顔で僕を振り返る。 「僕がお手伝いしましょう」と切れ切れに言うと、 そいつは掴んでいたウサギの肩を突き飛ばし、 松葉杖を振り上げた。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4397人が本棚に入れています
本棚に追加