オオカミの秘密

23/24
前へ
/253ページ
次へ
診察室に戻ると、奈々ちゃんも部屋にいた。 リュウの怪我の様子を見に来たけど、あんまり元気で拍子抜けしたみたいで、 ウサギの方を心配したみたいだ。 僕がウサギの顔を見ると、ゆっくりと、目を開いた。 僕と目があうと、 「ごめんなさい。」と泣き出した。僕は彼女のそばに座り、 「ウサギのせいじゃない」とそっと、声をかけたが、次第に泣き声が大きくなる。 奈々ちゃんが、僕と、涼子さんを部屋から出す。 涼子さんは 「子どもは奈々ちゃんの専門。泣けた方が心のためには良いわ。」 と笑って、処置室に戻って行った。 僕は部屋の前でウサギの泣き声をじっと聞いた。 苦しい。僕がそばにいて、抱きしめたい。 やがて、泣き声がおさまってきた。 奈々ちゃんが出てくる。 「菅原先生。ウサギちゃんは実家には知らせないで欲しいって、言ってる。 私の家に連れて帰っても良いけど…」と僕の顔を見る。 「休みをもらった。1週間そばにいられる。」と言うと、 「大切に出来る?」と聞くので、 「誓います。」と真面目に答える。 「自分で言ってみて。」とドアを開けて、中に一緒に入った。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4397人が本棚に入れています
本棚に追加