オオカミの秘密

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息を切らしながら、休憩室に戻ると、 奈々ちゃんがお水を渡してくれた。リュウが 「逃げられた?」と笑う。 「足が速すぎるんだよ」と怒った声で言うと、西野のヤツが、 「陸上部だったって、しおりんに聞いた。」と言った。 だから、キッチリふくらはぎに筋肉がついてたんだな。僕は 「しおりんに近づくな。この間送ろうと思った時に ゴツい男が迎えに来てたぞ。」と脅かしてやると、 5年目の奴らも、エ~!と言った。おまえら、妻や恋人がいるだろ。 「しょうがない人達だなあ」と奈々ちゃんが呆れる。 「菅原先生、ご飯食べる?」と聞いてくれたので、 ありがたくいただく事にした。 リュウの隣に座り、 「なんで、ウサギって知ってるんだ?」とちいさな声で聞いたら、 「やっぱり、そうか。あれはおまえのウサギだろ。 俺のウサギはナナコだった。」と笑う。 僕はあっけにとられる。 「非常ドアをナナコがくぐる時、俺もアリスに出てくるウサギだって思ったよ。」 と、クスクス笑い、 「おまえさ、あそこはちゃんと、管理されてる場所だって思わなかった? ここの院長がひとりになりたい新人のために、ワザと入れるようにしてあるんだよ。 まあ、教育係りの何人かが知っていて、必要そうな子どもにヒントをあげるんだ。 どうしても必要な子どもだけが、なんとか見つけて使うんだよ。 毎年使われてるわけじゃないけど、今年はおまえと、あの子がたどり着いた。 夜にはちゃんと鍵がかかってるし、非常ベルが鳴ると、電子鍵が開くようになってる。 分かった?それに、裏庭が見えるって事は裏庭からも見えるってことだろ。 俺はおまえがいたのがわかったよ。誰といるかは知らなかったけど…」と あっさり言った。 顔が赤くなる。 この男には永遠にかなわない。 今回もそう思う。 リュウの奴が 「菅原ぁ、このまま、ウサギを逃すつもり?」と大声で聞く。 僕は 「あれは、僕のウサギだ。逃すつもりはないよ」 ときっぱり言う。 周りの奴らが、ヒューと口笛を吹いて、冷やかす。 まあ、自分でもわかっていたけど、 やっと、決心がついたよ。
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