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共鳴に重なる三つめの歌は、きっとジラが、頭の中で勝手につくり出した代物で。
記憶そのものを再現したものですら、なく。
けれど、それはもしかしたら、ふたりが出会った始まりのところから――そういうものだったかもしれなかった。
ジラは、レシカの、虚像しか知らない。
きっと世界のあるがままさえ、自分好みに想像して創造し直したものしか、見えないし、愛すことができないのだろう。
けれど、そんな自分だからこそ、醜悪なくらいに臆病だったのかもしれないレシカが遺した望みを、叶えてやることはできる、と思う。
まぼろしは、肉体に依存することなく、半永久的に生きることができる、から。
ごめんなさい、と、心に言う。
こんなかたちで悪いけれど、とても、きっと、愛している。これからも。
さようなら。さようならレシカ。
どうか、楽園が、あなたにとって優しい場所でありますように。
私は私というけものの招く、眩(くら)き谷のひかりの中へ、自らの意志で下りてゆこう。
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