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僕は、他人に晒すものと隠すものを、時と場合に合わせ、より分けることを学習した。
歌や芝居、文学や抽象画。僕らしい匂いを発する物質を、内的な泉から汲み上げる作業を遠ざけ。
同一感を強める集団的な会話法、大勢に巧く溶け込むこと、密かに見分けた強者と弱者をそれぞれ利用することを覚え……僕は本当の意味で、賢く、強く、……少しだけ鈍く、その分だけ更に強い少年になった。
やがて上級生になり、監督生に選ばれると、両親には喜ばれた。
自己の印象を操る。それは表現活動に良く似た、まったく違うものだ。ただの、処世術。便利だけれど、何も美しくはない。
僕はもうどこにだって立つことができた。人の上にも下にも、傍にも遠くにも。
同好の士の少ない趣味との、正しい距離の取り方も承知した。時に余興として披露して、親しみや複雑性の演出として使うことも覚えた。
けれど。
ゲーテ、リュッケルト、ハイネ、ミュラー、リルケ。
無人になった夜の勉強室で、時折僕は意味もなく、若草色の革装詩集の背に触れたものだ。
澄んだ思慕のようだった言葉への想いは、罪悪感にも似た複雑な苦みと官能的な甘さをまぶされ、かなり始まりとは趣を変えてしまったけれど、
――その味すら、人生の彩と言えば、そうなのだろう。
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