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大学を卒業しても、そんな感じでのらりくらりと模範的な青年を演っていた僕を心配したのか、両親、特に実母の方が熱心に見合い話を持って来た。
選挙の準備で本格的に忙しくなる前に、伴侶を捕まえ、早いところ後継者を作っておいた方が効率が良いというのは、僕にだってわかっていたのだけれど。
ぴったりの相手がいないのだから仕方がない。
一見申し分ない話を断るごと、それではどんな女性なら良いのと問われるので、僕の理想の女性は、それこそ古くから数多の詩に謳われてきたような、現実に存在するとは思われない、大層夢見がちな像ということになってしまった。
老若男女問わず好感を持たれる端麗な容姿の、貞淑で、弱者に優しくでき、裏表がなく、感性が細やかで。あらゆる美徳を携えながら、けれど他人に利用されるほど愚かでいられたら困る。聡く、大人になっても少女のように好奇心が旺盛なまま、勤勉で、しかし清濁は併せ呑めるような、そんな人が良い。何らかの芸術的才能に秀でていると尚嬉しい。永久に尊敬できる女性と結婚したい。そんな風に。
……本気で言ったわけじゃない。僕は結局のところ、まだ結婚などしたくなかったのだ。
しかし両親は、本当にそういう女性を探してきてしまった。
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