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「脱税そのものはまあありがちな流れだけど、今回B勘屋が噛んでるんだね」
裁判ごとに当たる担当検事の顔ぶれは毎回変わる。東京地検ともなると特に人数が多い上、一度当たっても異動で人が入れ替わるため、毎回違う人間に当たると言っても過言ではない。
だからその都度初めましてと挨拶し、名刺交換をする羽目になる。
そして今回当たった担当検事がこれまた王子様のような美貌で驚いた。
この業界も大人数の人間がいるのでたまに美男に会うが、毎回思う。何でこの人たちはイケメンでありながらもエリートなんだと。不公平じゃないかと。
「はい。経費の水増し請求に絡んでいます」
「倒産会社名義の領収証発行か。倒産している会社には税務調査ができないから困り者だな」
「それについてはB勘屋のほうから調査を入れています」
「今ざっと見たところでは特に不利な点がなさそうだから順当に有罪には持ち込めると思うけど、足りない分に関しては更に聴取を依頼させてもらうかもしれない」
「わかりました」
検事によっては威圧的だったりせっかちだったり細かいことを過剰に追及してきたりと、様々な人間がいる。
だがこの志賀という男は常に微笑みを絶やさないため人当たりが良く、上品で柔和な印象だ。この気品はもしかしたら宝来のようにお坊ちゃん育ちなのだろうか。
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