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 一通り説明を終え、質疑応答をくり返すと今回の打ち合わせは終えられた。  意外に鋭いつっこみをしてくる。そういう時に垣間見せる表情は冷淡で、あれ、と引っかかる。  もしかしたらこの人はただ穏やかというだけの人ではないのかもしれない、と思った。 「…長篠くんに聞いたんだけど、君って水落さんと親しいの?」  そしてその質問で、整理していた書類をバサバサと床にぶち撒けてしまった。 「あ、大丈夫?」 「すみません、大丈夫です」  慌てて拾い上げる。優しい彼もそれを手伝ってくれた。その間も動揺による心拍数の乱れは治らない。  そうか、以前長篠との打ち合わせに水落が登場してかき乱していかれたのだった。しかも水落と長篠が通じていたように見えた。その話を聞いたのだろう。 「…親しくはないです」 「そうなんだ。食事に行ってたみたいだけど」 「あの、志賀さんこそ水落さんと親しいんですか?」  追及を避けるように逆に質問し返したらまた微笑まれた。 「俺も親しいわけじゃないけど交流はあるよ。水落さんは先輩検事だからね」 「あ、それはそうですよね」 「あと、よく特捜部に誘ってもらうから」 「特捜に?」  それはつまり水落が認めるほど有能ということの証だろう。じゃあ志賀も他の検事の中で抜きん出て優秀だということか。
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